「週刊SL鉄道模型」創刊号 満を持したシリーズの分析めいた雑感
講談社から1月26日に新創刊となった「週刊SL鉄道模型」の創刊号を買ってまいりました。2007年刊行の第一弾「週刊 昭和の鉄道模型をつくる」、2009年刊行の第二弾「週刊 鉄道模型 少年時代「に続くNゲージジオラマ製作マガジンです。現在、書店の店頭の目立つところに大量に平積みになっています。現在、他のパートワークを押しやる程の勢いです。
昨日の夕刊の見開き2ページに、デカデカとカラー全面広告が打たれていました。満を持して今回のシリーズを発売した講談社の強い意気込みが感じられます。この新聞広告の写真は、ほぼ原寸サイズのために、テーブルの上に置いて完成時のイメージを確認することが出来ます。
これまでにいくつかのパートワークを手掛けてきましたが、こんな凄まじい新聞広告を打っているのを見るのは初めてです。鉄道模型ジオラマ製作の裾野が拡がり、多くの方が挑戦されるであろうことが予測できます。
創刊号からしばらくは書店の店頭で冊子を立ち読みできますし、付属パーツの機関車を見ることができます。パッケージングされた機関車は、なかなか精密で魅力的に見えるものです。A4より少し小さめのパッケージは無駄が少なくて好ましく思えます。開封すると、冊子とパーツ、そしてアンケート用紙が出てきます。このシリーズではスタートアップDVDはありませんでした。私にとってはちょっとした楽しみだったのですが、仕方ありません。
このシリーズは全70号です。第1弾の「昭和の鉄道模型をつくる」は全50号、第2弾の「鉄道模型少年時代」は全75号、そのまま成長して次は100号になってしまうのかと思ったら、手頃なところで抑えて来ました。
創刊号は特別価格の790円、2号以降は1680円です。途中の計8号が特別価格にて、少々高くなります。特別価格の号が幾らなのかは不明ですが、総額は120,110円であることがわかっています。「昭和の鉄道をつくる」の74,280円、「鉄道模型少年時代」の119,610円に比べ、総額は成長しているようです。
高価になるのは、車両を走行させるための動力ユニット、レールに電気を流して車両を操作するコントローラー、ポイントを含むレールの3号、そしてターンテーブルの3号です。書店予約での毎号購入、月締めの支払いに加え、今回はシリーズ一括払いの設定があります。しかし、一括払いしたからといって割引があったり、プレゼントがもらえるといったようなことはありません。
ジオラマの舞台は昭和30年代、高度経済成長期の日本の地方都市です。日本各地にてSLが元気良く走り回っていた時代の再現です。季節は稲の刈り取りが終わった秋の設定です。ベースのサイズは幅60cm×奥行き45cmで、前作、前々作と同じ。テーブルの上などでも手軽に楽しめます。
左側にターンテーブルを含む車両基地と貨物駅、右側は繁華街の町並みと旅客駅を配した、ベースの狭さを感じさせない広がりのある秀逸なレイアウトです。
講談社のパートワークは、途中でパーツ変更が生じることがあるものの、基本的に全ての構成が最初から判っている安心感があります。
第1弾の「昭和の鉄道模型を作る」では、一部趣味人の楽しみであった鉄道模型ジオラマ作りの楽しみを、書店で気軽に購入できるパートワーク化することによって多くの方に広げました。映画「ALWAYS 三丁目の夕日」のヒット等あり、昭和の時代の情景作りも好評を博しました。
第2弾の「鉄道模型少年時代」では、鉄橋や神社など立体的な表現のストラクチャーを配し、一部LED電飾を行っています。ジオラマ製作の上級テクニックを多く紹介して、鉄道模型ジオラマの情景作りが強化されました。本格的なジオラマ作製テクニックも多く紹介され、鉄道模型の世界の幅を拡げています。僭越ながら、私も記事の一部に協力しました。神田のアートボックスの編集部で、夜遅くまでLEDの電子工作をしたのも楽しい思い出です。
今回は、3箇所のポイントやターンテーブルがあり、情景作りに加え、車両運転の変化が楽しめるようになっているのが特徴です。レールや地面シートを両面テープで貼る方法を取って工作の簡略化を図り、初心者にも親しみ易くしています。
このシリーズの優位であろうと思われる点を、ざっくり挙げてみます。
まずは市場環境からです。
・不況が続く出版界に於いて、パートワーク分野のカテゴリーは成長が続いている。
・鉄道模型市場の裾野が拡大している。
・日本は先進国中、本格的鉄道模型が最も安価に楽しめる。今のところ先進国しか鉄道模型趣味は無いので、世界で最も安価に楽しめる国である。
・三丁目の夕日等の昭和を舞台にした作品のヒットもあり、高度成長期の情景は、依然として人気が高い。
・前2作の成功により、鉄道模型パートワークが世の中に浸透してきた。
・車両模型と異なり、ジオラマ作りには女性ののファンも多い。実際に、前2作でも老若男女のユーザーを確保している。購読者層が厚い。
・SL鉄道模型のジオラマ製作は要望が多い。前作のアンケート結果より。
次に、シリーズの魅力です。講談社の強み部分も挙げて見ます。
・前2作の成功により、たっぷり鉄道模型ジオラマのパートワークのノウハウを蓄積している。
・講談社のジオラマ製作マガジンは、既にブランド化しており安心感がある。
・バラスト撒布、地面のパウダー仕上げ等の初心者に難しい作業を省いた上でリアルなジオラマを提供している。
・限られたスペースの中で、周回路、引込み線、ターンテーブルを効率よく配した優れた配線。
・ストラクチャーの配置が絶妙。左右の情景に変化をつけられている。
・何と言ってもSL模型レイアウトのハイライトとも言うべきターンテーブルがあること!小型のターンテーブルながらも、このサイズのレイアウトでは画期的。
反対に弱みや問題点です。
・以前に比べて安価なストラクチャーや車両が市場に溢れ、パートワークに頼らなくても十分自作出来ると考える方が増えているかもしれない。
・2007年当時よりも工作系の魅力的なパートワークが多く、挑戦中の人は新しいシリーズを手掛けられない環境になっている。私の場合ですが・・・。
・3箇所のポイント、ターンテーブルが手動である。
・非電化路線の設定のため創刊号付属の電気機関車があまり一般的でない蓄電池機関車(バテロコ)となっている。
・50号までの購読者全員プレゼントのSL模型が、B20に似たフリーランスの入れ替え型で、本線走行用の雰囲気ではない。正直言って試作品の出来はイマイチ。
問題点を挙げていると、瑣末な問題が多そうです。ユーザーの努力で解決できるものもありそうです。例えば、ポイントやターンテーブルの電動化があります。これらは現状市販品の無いオリジナル品のために、現物を見てみないことには電動化できるかどうかは判りません。
また、バラスト撒布や地面のパウダー仕上げが無い部分は簡単に作れる利点になっていますが、これを自前で行うことにより、よりリアルな情景が作れると思います。LEDによる電飾改造は、自作しなくてもジオコレの電飾キットを使用すれば、半田付けや電源作りの手間無く簡単に実施できます。
創刊号から50号までの冊子に付属している応募券を送ってもらえる購読者全員プレゼントは、このTOMYTEC製のオリジナルSL車両です。ちゃんとロッドが動く本格派とのことで、旧国鉄のB20などがモデルになっているオリジナルデザインです。足回りはTOMIXのトーマスシリーズのパーシーのものが流用されていると思われます。
購読者プレゼントのSL模型は、このシリーズの目玉の一つです。しかし、正直言って私はこのSL模型はイマイチに感じます。写真の試作品は、全体のプロポーションが骨太過ぎますし、細部のディティールも甘く思います。半径140mmを通過でき、しかも小型ターンテーブルに載ることが出来るSL模型が少ないことを考えると、このパーシーの足回りのフトッチョ入替用SLは仕方ないのかもしれません。1年後にプレゼントされる時には、大幅に改良されている可能性もあります。
このレイアウトで活躍できる市販のSL模型を探すのも、一つの楽しみになるでしょう。制限事項を課せられた中での模型探しは楽しいものです。
講談社のパートワークで付属したオリジナルパーツは、若干姿を変えて市販されるのが通例です。この機関車も少し装いを変えて、シリーズ終了後にTOMYTECから発売されると予測しています。
創刊号の付属パーツは、里山交通BD2012形機関車です。台座のレールとセットになっています。パッケージを開いたときの見せ方を考え、機関車とレールを上下に並べて収納する箱に入れられています。
「里山交通」とは架空の私鉄の名称で、前作の「鉄道模型少年時代」でも使われていた馴染みのある会社名です。前作の夏祭りの里山の光景と、どこかで繋がっているかのような想像が膨らみます。
この凸型機関車、TOMYTECの鉄道コレクション第1弾の電気機関車を基にしています。しかしルーフにパンタグラフがありません。冊子の説明によると、この機関車は蓄電池機関車(バッテリーロコ、略してバテロコ)とのことです。SLが走行する路線なので非電化であり、架線が無いからバテロコなのでしょう。苦肉の策であることが伝わってきます。
非電化ならディーゼル機関車でよいじゃないかと思ったら、このシリーズの基本となっている鉄道コレクションにはディーゼル機関車はありませんでした。DD13あたりならピッタリかと思いますが、無ければ仕方ありません。
機関車のフォルムは結構良いので、これはこれで楽しませてもらえそうです。もう一両欲しいと思います。ミニレイアウトで貨車を牽かせるのにピッタリです。
底部の表記には、2005年の金型から作られていることが書かれています。手軽に模型を楽しめる嚆矢となった鉄道コレクションの最初のシリーズ発売から、もう7年も経っていることが判ります。
ルーフの真ん中にのパンタグラフを取っ払った場所には、最初からそんなもの無かったかのように四角いプレートがはめ込まれています。
この怪しいバテロコ、模型としてはかなりの小型です。
「昭和の鉄道模型をつくる」や、「鉄道模型少年時代」の時の車両と比較すると、その小ささが際立ちます。
全長は80mm程度。かなりの急カーブも曲がれそうです。このシリーズのコンパクトなレイアウトにはピッタリでしょう。
ただ、走行させるためには34号に付属する動力ユニットを組み込む必要があります。これはTOMYTECの「TM-3鉄道コレクション動力ユニット12m級用」と同等品です。現在はメーカー欠品中にてあまり市場に出回っておらず、入手困難な製品です。小さな模型店のデッドストックを探せば見つかるかもしれません。
この小さな機関車のサイズから換算すると、ターンテーブルもとても小さいことがわかります。このターンテーブルに載せることができる機関車も限られてくるでしょう。
機関車の側面には、里山交通のマークが描かれます。これは今後配布される貨車にも描かれますが、SLの試作品には描かれていません。
今後配布される車両は、貨車が3両です。
2号のコム1形貨車、4号のワム7000形貨車、9号のトラ4500形貨車です。序盤に4つの車両が揃います。全て市販のTOMIXの2軸貨車を基にしたオリジナル品です。客車は配布されません。
子供の頃の貨物列車の思い出では、貨物列車の最後尾には必ず車掌車が繋がれていたのですが、残念ながらこのシリーズでは付属しません。まあ地方私鉄なので、その点はこだわらなくても良いのかもしれません。2軸貨車の模型は安価なので、色々揃えてみるのも楽しいでしょう。
次号の2号では、里山交通コム02形貨車と看板シールが付属します。
コム1形貨車は、TOMIXのコム1タイプを基にしたオリジナル品のようです。市販品のコム1タイプには12フィートコンテナが二つ積載されていますが、この里山交通コム02形には大きな20フィートコンテナが一つだけ載せられています。全く異なる貨車の雰囲気を出しています。
看板シールは、昔懐かしいホーロー看板を模したシールです。予告写真を見る限り、実際にある看板をそのまま縮小したようで、リアルな商品名が書かれています。
講談社さんの気合の入った新シリーズであるために、市場の期待と同時に私の期待も大きくなっているのかもしれません。私見ながら、このシリーズは前作、前々作以上に話題になって、記録的に売れるでしょう。鉄道模型ジオラマ作りの裾野を更に拡げる役割を果たすものと思われます。
勝手なこと言いながらも、私は2号以降、購読するかどうかは決めておりません。続ける時間的な余裕や部屋の場所が無いのが現実なのです。でも、3両の貨車は欲しいな。もちろんSLもですが・・・。
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