問題児ユンカース(時計)の電池交換はゴムボールで!
6月にミュンヘンとパリに旅行に言った際、往路のルフトハンザ航空の機内販売で腕時計を買いました。
ユンカースというブランドの時計で、文字盤の中にもう一つ短針と長針からなる小さなアナログの時計があり、時差のある2箇所の時刻を同時表示できるものです。クオーツの時計なので、旅行中にはそれなりに役に立ちました。価格は139ユーロです。ネットで調べると、日本では3万円程度で売っているようで、機内販売ながらの安さです。二つの時刻はバラバラに設定することが出来るので、時差に応じて適時変更することが出来ます。海外旅行には持って来いです。
ユンカースとは、戦前のドイツの航空会社の名前です。航空機メーカーとしても有名で、輸送機や旅客機、戦闘機や爆撃機に至るまで、数々の名機を残しています。旅行で利用したルフトハンザ航空の前身の一つでもあり、感慨深い思いでこの時計を衝動買いしたものです。文字盤の数字が大きくて見やすく、航空時計のイメージを出しているようです。写真では小さく見えますが、ダイヤル直径は41mmもあって、かなりの大型時計です。現在のデカ厚時計のトレンドに合わせたデザインです。
革ベルトなのに金属バックルが付いていて、スポーティーです。手首の細い私には、最も内側の穴を使用しないと腕にフィットしません。
クオーツなので、航空時計として有名なブライトリングやIWCの様な高級時計とは異なり、格好重視のファッション時計のクオリティです。
ケースの裏には、この時計のモデルとなったユンカースの大型機、JU52が彫られています。ルフトハンザにはまだ戦前のJU52を1機、動態保存しているとの事です。
一応、ドイツ製と記されています。
ユンカースという栄光のブランド名と、そのガッシリとした佇まいからは、質実剛健なドイツの機械の印象があります。旅行中にはしっかり働いてその役割を果たしました。しかし帰国してから間もなく、一日に数秒ずつ遅れるようになってきました。
普段は機械時計ばかり使用しているので、一日に数秒の遅れくらいならば日常茶飯事です。でもクオーツは時計合わせをあまりしなくても良いのが特徴なのに、厄介なことです。
そして日を追うごとに狂いが大きくなり、一日に30秒とか1分近くも遅れるようになってきました。これではマトモな時計として使用できません。停まっている時さえありました。蒸し暑い日本の環境に適さないのでしょうか。一日に1分も狂うクオーツは、はっきり言って故障しています。最終的には1日に5分10分平気で遅れていました。
外国の航空会社の機内販売で買った時計など、何処にクレームを付ければよいか分かりません。このまま壊れた時計を持って泣き寝入りなのでしょうか。ドイツ語の保証書には購入日付が入っておらず、保証書の用を成しません。第一、何処に送ったらよいかもわかりません。
ドイツ博物館には、この時計のブランド名の基となったユンカースJU52が展示されています。建物の中にどうやってこの大型機を入れたのか、本当に不思議です。
軽量化のために採用されたコルゲート状の外板が特徴です。時計の文字盤のストライプは、このコルゲートをイメージしているのでしょうか。でも実機を近くで見ると、塀などに使用されている波状トタンの様に粗末に見えてしまいました。
ひょっとして、最初にセットされていた電池が消耗しているのでしょうか。どんな時計でも、「出荷時にセットされている電池はモニター用です」ということで、早期に電池が無くなっても仕方ないのです。電池交換して直れば問題ありません。というか、電池交換くらいしか出来ることがありません。
ケースの裏蓋はねじ込み方式です。このタイプの裏蓋を開けるには専用の工具が必要なのですが、そんなものは一般家庭にありません。でもゴムボールを使用すれば、割と簡単にねじ込み式の裏蓋を開けることができます。子供のボール遊び用の、中に空気が入っていて地面で跳ねるゴムボールです。
裏蓋に押し付けて反時計回りに回すと、裏蓋が回って外れてくるのがわかります。
すぐに裏蓋が開きました。
ケースの直径が大きくて立派ではありますが、中を見ると小さなムーブメントがチョコンと収まっています。外周の部分は大きなスペーサーが入っています。
心臓部はスイス製RONDA6203.8という汎用ムーブメントです。よく安物のファッション時計に使用されているものです。
電池はSR916SWという酸化銀電池です。電圧は1.55V。ホームセンターでは売っていないかもしれませんが、これなら大須の電気屋さんで簡単に手に入りそうです。
SR916SW、大須の海外通商さんで早速一つだけ買ってきました。amazonでは5個入りで送料込900円くらいで売っていましたが、大須では一つ200円です。でもたくさん買ってもこの時計の他に用途が無いので、とりあえず一つだけにしておきます。時計屋さんで電池交換したら1000円~2000円くらいは要りますし、こんな安物時計でも「舶来時計はお断り」なんて言われて好感してくれない事が多くあります。立場を置き換えれば、私もこんな怪しげな時計の電池交換したくありません。
電池交換をすると、再び時計が動き出しました。
裏蓋をねじ込む際には、裏蓋の外枠にはまったゴム製のOリングがずれないように気をつけます。これが外れたり、ネジにはまって切れたりすると、防水機能が損なわれるからです。
裏蓋をゴムボールを使用してきっちりねじ込んで、電池交換作業は終了です。再び時計の時刻を合わせて様子を見ます。
電池交換後、5日くらい様子を見ました。その結果、不調の原因は電池ではないのじゃないかという思いがつよくなりました。電池効果の効果はあまり無く、相変わらず遅れることがあります。よく見ていると、「寝て」いる時があるようです。このままでは記念品として取って置くにしても、実用には供しません。
涼しいドイツから、やたらと蒸し暑い日本に無理やりつれてこられて戸惑っているのでしょうか。旅行中は何の狂いも無かったのに、日本に持ってきた途端、狂いだすのは不思議でなりません。手の掛かるロレックス達と同様に毎日時刻あわせをするのは苦痛ではありませんので、面倒な仲間が増えたと思って、常に電池を切らさないよう動かしていきたいと思います。
こんな安物クオーツ、時計屋さんに持っていくのが恥ずかしかったのですが、先日他の時計の用事と一緒に松坂屋の時計修理サロンに持っていきました。若干帯磁していたようなので、脱磁してもらっています。ついでの顧客サービスということで無料でやってくれました。
それから2日、今のところ、「寝て」いることは無さそうです。遅れは0秒。2ヶ月振りにマトモに動いています。でも、この時計に対してはすっかり信頼を無くしているので、予断を許しません。本格的なムーブメントの分解掃除は1万5千円から2万円程度とのこと。それで完璧に治る保証があるわけでなく、その価値も見出せません。結局は機内販売の時計は阿呆記念となってしまうのでしょうか。
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