まったりレトロなカブトビールは冬にぴったり
先週、愛知県半田市の実家に帰ったついでに、半田赤レンガ建物に立ち寄って「カブトビール」を買ってきました。
明治31年に建てられた赤レンガのカブトビールの工場が、今年の7月にリニューアルの上、観光施設として常時一般公開され、テレビや雑誌でも取り上げられるようになりました。そこでは明治時代の復刻ビールが楽しめるという事で、一度訪れたいと思っていたのです。実家から車で5分程度の場所なのですが、なかなか機会がありませんでした。
赤煉瓦倶楽部半田
http://www.akarenga-handa.jp/
元々カブトビールの工場であったのが、戦後になって閉鎖され、その後日本食品化工の工場として長く使用されていました。コーンスターチ製造工場として運用されていたので、周囲には時折、独特の匂いが漂っていたことを覚えています。名鉄河和線の住吉町駅から程近い場所に、広大な工場敷地を要していました。
21年前の1994年にその工場も操業を終え、工場の建物と敷地は半田市に譲渡されました。明治時代から残る赤煉瓦の建物を除く工場の大半の建物は撤去され、跡にはびっくりするほど広大な敷地と、片隅に残る赤煉瓦のチンマリ(と見えた)としたレトロな建物が残されました。
広大な工場跡を手に入れたものの、半田市は持て余したのでしょう。残された赤レンガ工場は結果として貴重な文化遺産となったものの、他の大半の土地利用に困ったと思われます。大型ショッピングセンターを誘致するにはピッタリの場所ではありましたが、あまり露骨に商売に走るわけにもいかないのか、赤レンガ工場の周囲を少し残した他の場所は、結局ハウジングセンターとして利用されています。
残された赤レンガ工場がきれいに修復され、公開されるのに20年を要することになったのは不可解です。貴重な明治の文化遺産が残されることになったのは、半田市の努力の賜物、では絶対にありません。戦後利用してきた日本食品化工がその文化的価値を認め、使い難いながらもシンボルとして維持し続けてくれたからに他なりません。半田市が工場敷地をハウジングセンターじゃなく、赤レンガ工場をシンボルとした公園にすることだってできたはずでしょう。まあ財政的に不可能だったってことは、容易に理解できます。
ともあれ、20年ほったらかしというわけでは無く、細々と補強工事等を続けてきたから現在があるので、実家の地元の文化活動は応援したいと思います。
通りの裏側には割と広い駐車場と、イベント等を行える芝生広場があります。これからの盛り上がりが期待できます。今のところ、駐車場は無料です。
建物裏側の壁には、太平洋戦争当時の1945年7月15日の半田空襲の際に、米軍のP-51戦闘機から機銃掃射を受けた際の傷が残されています。半田市には中島飛行機製作所の工場があり、この赤レンガ工場はその衣糧倉庫として使用されていたために標的とされたのです。
頑丈であったことが功を奏し、P-51の12.7mm機銃弾では外壁に弾痕を付けるのがせいぜいだったようです。現代にも残る生々しい戦争の傷跡は一見の価値があります。
赤レンガ建物内部には展示室やイベントホールの他、カフェもあって、復刻カブトビールの生ビールを楽しむことができます。でも運転して帰らなくてはならないので、お土産の瓶ビールを買ってくることにしました。
小さな330ml入りの瓶ビール1本が600円。
売り上げの一部は、赤レンガ建物の維持にも利用されるとの事です。現在、残念ながら通販は行っていないようです。
3本入りの化粧箱入りは2000円。箱代200円の価値が見いだせない飲兵衛は、バラで2本だけ買いました。丁度2本入る専用袋に解説書を入れてくれました。
カブトビールは戦時中の昭和16年まで製造されていましたが、今回の復刻ビールは明治33年にパリ万博金賞受賞した当時の味とラベルを再現したものとの事です。
こんな美しいラベルで当時も売られていたのかと思うと、ビールは現代よりもずっと高級な飲み物であったことが窺えます。飲んだ後も飾っておきたいデザインです。
カブトビールは、半田市のふるさと納税でもらえる品目にも入っています。
容量は330ml。ビールの小瓶の334mlよりも少ない。当時は当然大瓶で売られていたと思います。アルコール度数は7%とかなり高め。通常のビールは4.5~5.5%程度です。実際に、この小さなビン1本分飲むだけで、結構酔います。
グラスに注ぐと、黒ビールの様な褐色です。泡立ちが少なく、少々粘度があるような感触。
ちょっとギネスのような香りではありますが、もっとまったりとして苦みがあり、後に甘みが残るような感じです。かなり濃い。
秋から冬に掛けて各ビール会社がアルコール度数の高いビールを限定品として売り出しますが、それらとは別物の濃さです。清涼感はありませんが、飲んだ満足感はあります。あまり冷やさずに、ゆっくり味わいたいものです。油の強いつまみにも合いそうです。
確かにビールではありますが、ワインを飲んでいるかのような酔い方をします。近年、日本中で売っている当地の地ビールとは一風変わった復刻ビール、舌に残る心地よい甘みが印象的です。たまに飲みたくなる味です。今度帰省したときも何本か仕入れてきたいものです。
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